Merge git://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/davem/net-2.6
[linux-2.6] / Documentation / ja_JP / SubmittingPatches
1 NOTE:
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3 This document is maintained by Keiichi KII <k-keiichi@bx.jp.nec.com>
4 and the JF Project team <http://www.linux.or.jp/JF/>.
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6 or a problem with the translation,
7 please contact the maintainer of this file or JF project.
8
9 Please also note that the purpose of this file is to be easier to read
10 for non English (read: Japanese) speakers and is not intended as a
11 fork. So if you have any comments or updates of this file, please try
12 to update the original English file first.
13
14 Last Updated: 2007/10/24
15 ==================================
16 これは、
17 linux-2.6.23/Documentation/SubmittingPatches の和訳
18 です。
19 翻訳団体: JF プロジェクト < http://www.linux.or.jp/JF/ >
20 翻訳日: 2007/10/17
21 翻訳者: Keiichi Kii <k-keiichi at bx dot jp dot nec dot com>
22 校正者: Masanari Kobayashi さん <zap03216 at nifty dot ne dot jp>
23          Matsukura さん <nbh--mats at nifty dot com>
24 ==================================
25
26         Linux カーネルに変更を加えるための Howto
27         又は
28         かの Linus Torvalds の取り扱い説明書
29
30 Linux カーネルに変更を加えたいと思っている個人又は会社にとって、パッ
31 チの投稿に関連した仕組みに慣れていなければ、その過程は時々みなさんを
32 おじけづかせることもあります。この文章はあなたの変更を大いに受け入れ
33 てもらえやすくする提案を集めたものです。
34
35 コードを投稿する前に、Documentation/SubmitChecklist の項目リストに目
36 を通してチェックしてください。もしあなたがドライバーを投稿しようとし
37 ているなら、Documentation/SubmittingDrivers にも目を通してください。
38
39 --------------------------------------------
40 セクション1 パッチの作り方と送り方
41 --------------------------------------------
42
43 1) 「 diff -up 」
44 ------------
45
46 パッチの作成には「 diff -up 」又は「 diff -uprN 」を使ってください。
47
48 Linux カーネルに対する全ての変更は diff(1) コマンドによるパッチの形式で
49 生成してください。パッチを作成するときには、diff(1) コマンドに「 -u 」引
50 数を指定して、unified 形式のパッチを作成することを確認してください。また、
51 変更がどの C 関数で行われたのかを表示する「 -p 」引数を使ってください。
52 この引数は生成した差分をずっと読みやすくしてくれます。パッチは Linux
53 カーネルソースの中のサブディレクトリではなく Linux カーネルソースのルート
54 ディレクトリを基準にしないといけません。
55
56 1個のファイルについてのパッチを作成するためには、ほとんどの場合、
57 以下の作業を行えば十分です。
58
59         SRCTREE= linux-2.6
60         MYFILE=  drivers/net/mydriver.c
61
62         cd $SRCTREE
63         cp $MYFILE $MYFILE.orig
64         vi $MYFILE      # make your change
65         cd ..
66         diff -up $SRCTREE/$MYFILE{.orig,} > /tmp/patch
67
68 複数のファイルについてのパッチを作成するためには、素の( vanilla )、す
69 なわち変更を加えてない Linux カーネルを展開し、自分の Linux カーネル
70 ソースとの差分を生成しないといけません。例えば、
71
72         MYSRC= /devel/linux-2.6
73
74         tar xvfz linux-2.6.12.tar.gz
75         mv linux-2.6.12 linux-2.6.12-vanilla
76         diff -uprN -X linux-2.6.12-vanilla/Documentation/dontdiff \
77                 linux-2.6.12-vanilla $MYSRC > /tmp/patch
78
79 dontdiff ファイルには Linux カーネルのビルドプロセスの過程で生成された
80 ファイルの一覧がのっています。そして、それらはパッチを生成する diff(1)
81 コマンドで無視されるべきです。dontdiff ファイルは 2.6.12 以後のバージョ
82 ンの Linux カーネルソースツリーに含まれています。それより前のバージョン
83 の Linux カーネルソースツリーに対する dontdiff ファイルは、
84 <http://www.xenotime.net/linux/doc/dontdiff>から取得することができます。
85
86 投稿するパッチの中に関係のない余分なファイルが含まれていないことを確
87 認してください。diff(1) コマンドで生成したパッチがあなたの意図したとお
88 りのものであることを確認してください。
89
90 もしあなたのパッチが多くの差分を生み出すのであれば、あなたはパッチ
91 を意味のあるひとまとまりごとに分けたいと思うかもしれません。
92 これは他のカーネル開発者にとってレビューしやすくなるので、あなたの
93 パッチを受け入れてもらうためにはとても重要なことです。これを補助でき
94 る多くのスクリプトがあります。
95
96 Quilt:
97 http://savannah.nongnu.org/projects/quilt
98
99 Andrew Morton's patch scripts:
100 http://www.zip.com.au/~akpm/linux/patches/
101 このリンクの先のスクリプトの代わりとして、quilt がパッチマネジメント
102 ツールとして推奨されています(上のリンクを見てください)。
103
104 2) パッチに対する説明
105
106 パッチの中の変更点に対する技術的な詳細について説明してください。
107
108 説明はできる限り具体的に。もっとも悪い説明は「ドライバー X を更新」、
109 「ドライバー X に対するバグフィックス」あるいは「このパッチはサブシス
110 テム X に対する更新を含んでいます。どうか取り入れてください。」などです。
111
112 説明が長くなりだしたのであれば、おそらくそれはパッチを分ける必要がある
113 という兆候です。次の #3 を見てください。
114
115 3) パッチの分割
116
117 意味のあるひとまとまりごとに変更を個々のパッチファイルに分けてください。
118
119 例えば、もし1つのドライバーに対するバグフィックスとパフォーマンス強
120 化の両方の変更を含んでいるのであれば、その変更を2つ以上のパッチに分
121 けてください。もし変更箇所に API の更新と、その新しい API を使う新たな
122 ドライバーが含まれているなら、2つのパッチに分けてください。
123
124 一方で、もしあなたが多数のファイルに対して意味的に同じ1つの変更を加え
125 るのであれば、その変更を1つのパッチにまとめてください。言いかえると、
126 意味的に同じ1つの変更は1つのパッチの中に含まれます。
127
128 あるパッチが変更を完結させるために他のパッチに依存していたとしても、
129 それは問題ありません。パッチの説明の中で「このパッチはパッチ X に依存
130 している」と簡単に注意書きをつけてください。
131
132 もしパッチをより小さなパッチの集合に凝縮することができないなら、まずは
133 15かそこらのパッチを送り、そのレビューと統合を待って下さい。
134
135 4) パッチのスタイルチェック
136
137 あなたのパッチが基本的な( Linux カーネルの)コーディングスタイルに違反し
138 ていないかをチェックして下さい。その詳細を Documentation/CodingStyle で
139 見つけることができます。コーディングスタイルの違反はレビューする人の
140 時間を無駄にするだけなので、恐らくあなたのパッチは読まれることすらなく
141 拒否されるでしょう。
142
143 あなたはパッチを投稿する前に最低限パッチスタイルチェッカー
144 ( scripts/patchcheck.pl )を利用してパッチをチェックすべきです。
145 もしパッチに違反がのこっているならば、それらの全てについてあなたは正当な
146 理由を示せるようにしておく必要があります。
147
148 5) 電子メールの宛先の選び方
149
150 MAINTAINERS ファイルとソースコードに目を通してください。そして、その変
151 更がメンテナのいる特定のサブシステムに加えられるものであることが分か
152 れば、その人に電子メールを送ってください。
153
154 もし、メンテナが載っていなかったり、メンテナからの応答がないなら、
155 LKML ( linux-kernel@vger.kernel.org )へパッチを送ってください。ほとんど
156 のカーネル開発者はこのメーリングリストに目を通しており、変更に対して
157 コメントを得ることができます。
158
159 15個より多くのパッチを同時に vger.kernel.org のメーリングリストへ送らな
160 いでください!!!
161
162 Linus Torvalds は Linux カーネルに入る全ての変更に対する最終的な意思決定者
163 です。電子メールアドレスは torvalds@linux-foundation.org になります。彼は
164 多くの電子メールを受け取っているため、できる限り彼に電子メールを送るのは
165 避けるべきです。
166
167 バグフィックスであったり、自明な変更であったり、話し合いをほとんど
168 必要としないパッチは Linus へ電子メールを送るか CC しなければなりません。
169 話し合いを必要としたり、明確なアドバンテージがないパッチは、通常まず
170 は LKML へ送られるべきです。パッチが議論された後にだけ、そのパッチを
171 Linus へ送るべきです。
172
173 6) CC (カーボンコピー)先の選び方
174
175 特に理由がないなら、LKML にも CC してください。
176
177 Linus 以外のカーネル開発者は変更に気づく必要があり、その結果、彼らはそ
178 の変更に対してコメントをくれたり、コードに対してレビューや提案をくれ
179 るかもしれません。LKML とは Linux カーネル開発者にとって一番中心的なメー
180 リングリストです。USB やフレームバッファデバイスや VFS や SCSI サブシステ
181 ムなどの特定のサブシステムに関するメーリングリストもあります。あなた
182 の変更に、はっきりと関連のあるメーリングリストについて知りたければ
183 MAINTAINERS ファイルを参照してください。
184
185 VGER.KERNEL.ORG でホスティングされているメーリングリストの一覧が下記の
186 サイトに載っています。
187 <http://vger.kernel.org/vger-lists.html>
188
189 もし、変更がユーザランドのカーネルインタフェースに影響を与え
190 るのであれば、MAN-PAGES のメンテナ( MAINTAINERS ファイルに一覧
191 があります)に man ページのパッチを送ってください。少なくとも
192 情報がマニュアルページの中に入ってくるように、変更が起きたという
193 通知を送ってください。
194
195 たとえ、メンテナが #4 で反応がなかったとしても、メンテナのコードに変更を
196 加えたときには、いつもメンテナに CC するのを忘れないようにしてください。
197
198 小さなパッチであれば、Adrian Bunk が管理している Trivial Patch Monkey
199 (ちょっとしたパッチを集めている)<trivial@kernel.org>に CC してもいい
200 です。ちょっとしたパッチとは以下のルールのどれか1つを満たしていなけ
201 ればなりません。
202  ・ドキュメントのスペルミスの修正
203  ・grep(1) コマンドによる検索を困難にしているスペルの修正
204  ・コンパイル時の警告の修正(無駄な警告が散乱することは好ましくないた
205    めです)
206  ・コンパイル問題の修正(それらの修正が本当に正しい場合に限る)
207  ・実行時の問題の修正(それらの修正が本当に問題を修正している場合に限る)
208  ・廃止予定の関数やマクロを使用しているコードの除去(例 check_region )
209  ・問い合わせ先やドキュメントの修正
210  ・移植性のないコードから移植性のあるコードへの置き換え(小さい範囲で
211    あればアーキテクチャ特有のことでも他の人がコピーできます)
212  ・作者やメンテナによる修正(すなわち patch monkey の再転送モード)
213 URL: <http://www.kernel.org/pub/linux/kernel/people/bunk/trivial/>
214
215 7) MIME やリンクや圧縮ファイルや添付ファイルではなくプレインテキストのみ
216
217 Linus や他のカーネル開発者はあなたが投稿した変更を読んで、コメントでき
218 る必要があります。カーネル開発者にとって、あなたが書いたコードの特定の
219 部分にコメントをするために、標準的な電子メールクライアントで変更が引用
220 できることは重要です。
221
222 上記の理由で、すべてのパッチは文中に含める形式の電子メールで投稿さ
223 れるべきです。警告:あなたがパッチをコピー&ペーストする際には、パッ
224 チを改悪するエディターの折り返し機能に注意してください。
225
226 パッチを圧縮の有無に関わらず MIME 形式で添付しないでください。多くのポ
227 ピュラーな電子メールクライアントは MIME 形式の添付ファイルをプレーンテ
228 キストとして送信するとは限らないでしょう。そうなると、電子メールクラ
229 イアントがコードに対するコメントを付けることをできなくします。また、
230 MIME 形式の添付ファイルは Linus に手間を取らせることになり、その変更を
231 受け入れてもらう可能性が低くなってしまいます。
232
233 例外:お使いの電子メールクライアントがパッチをめちゃくちゃにするので
234 あれば、誰かが MIME 形式のパッチを再送するよう求めるかもしれません。
235
236 警告: Mozilla のような特定の電子メールクライアントは電子メールの
237 ヘッダに以下のものを付加して送ります。
238 ---- message header ----
239 Content-Type: text/plain; charset=us-ascii; format=flowed
240 ---- message header ----
241 問題は、「 format=flowed 」が付いた電子メールを特定の受信側の電子メール
242 クライアントがタブをスペースに置き換えるというような変更をすることです。
243 したがって送られてきたパッチは壊れているように見えるでしょう。
244
245 これを修正するには、mozilla の defaults/pref/mailnews.js ファイルを
246 以下のように修正します。
247 pref("mailnews.send_plaintext_flowed", false); // RFC 2646=======
248 pref("mailnews.display.disable_format_flowed_support", true);
249
250 8) 電子メールのサイズ
251
252 パッチを Linus へ送るときは常に #7 の手順に従ってください。
253
254 大きなパッチはメーリングリストやメンテナにとって不親切です。パッチが
255 未圧縮で 40KB を超えるようであるなら、インターネット上のアクセス可能な
256 サーバに保存し、保存場所を示す URL を伝えるほうが適切です。
257
258 9) カーネルバージョンの明記
259
260 パッチが対象とするカーネルのバージョンをパッチの概要か電子メールの
261 サブジェクトに付けることが重要です。
262
263 パッチが最新バージョンのカーネルに正しく適用できなければ、Linus は
264 そのパッチを採用しないでしょう。
265
266 10) がっかりせず再投稿
267
268 パッチを投稿した後は、辛抱強く待っていてください。Linus があなたのパッ
269 チを気に入って採用すれば、Linus がリリースする次のバージョンのカーネル
270 の中で姿を見せるでしょう。
271
272 しかし、パッチが次のバージョンのカーネルに入っていないなら、いくつもの
273 理由があるのでしょう。その原因を絞り込み、間違っているものを正し、更新
274 したパッチを投稿するのはあなたの仕事です。
275
276 Linus があなたのパッチに対して何のコメントもなく不採用にすることは極め
277 て普通のことです。それは自然な姿です。もし、Linus があなたのパッチを受
278 け取っていないのであれば、以下の理由が考えられます。
279 * パッチが最新バージョンの Linux カーネルにきちんと適用できなかった
280 * パッチが LKML で十分に議論されていなかった
281 * スタイルの問題(セクション2を参照)
282 * 電子メールフォーマットの問題(このセクションを参照)
283 * パッチに対する技術的な問題
284 * Linus はたくさんの電子メールを受け取っているので、どさくさに紛れて見
285   失った
286 * 不愉快にさせている
287
288 判断できない場合は、LKML にコメントを頼んでください。
289
290 11) サブジェクトに「 PATCH 」
291
292 Linus や LKML への大量の電子メールのために、サブジェクトのプレフィックスに
293 「 [PATCH] 」を付けることが慣習となっています。これによって Linus や他の
294 カーネル開発者がパッチであるのか、又は、他の議論に関する電子メールであるの
295 かをより簡単に識別できます。
296
297 12) パッチへの署名
298
299 誰が何をしたのかを追いかけやすくするために (特に、パッチが何人かの
300 メンテナを経て最終的に Linux カーネルに取り込まれる場合のために)、電子
301 メールでやり取りされるパッチに対して「 sign-off 」という手続きを導入し
302 ました。
303
304 「 sign-off 」とは、パッチがあなたの書いたものであるか、あるいは、
305 あなたがそのパッチをオープンソースとして提供する権利を保持している、
306 という証明をパッチの説明の末尾に一行記載するというものです。
307 ルールはとても単純です。以下の項目を確認して下さい。
308
309         原作者の証明書( DCO ) 1.1
310
311         このプロジェクトに寄与するものとして、以下のことを証明する。
312
313         (a) 本寄与は私が全体又は一部作成したものであり、私がそのファイ
314             ル中に明示されたオープンソースライセンスの下で公開する権利
315             を持っている。もしくは、
316
317         (b) 本寄与は、私が知る限り、適切なオープンソースライセンスでカバ
318             ーされている既存の作品を元にしている。同時に、私はそのライセ
319             ンスの下で、私が全体又は一部作成した修正物を、ファイル中で示
320             される同一のオープンソースライセンスで(異なるライセンスの下で
321             投稿することが許可されている場合を除いて)投稿する権利を持って
322             いる。もしくは、
323
324         (c) 本寄与は(a)、(b)、(c)を証明する第3者から私へ直接提供された
325             ものであり、私はそれに変更を加えていない。
326
327         (d) 私はこのプロジェクトと本寄与が公のものであることに理解及び同意す
328             る。同時に、関与した記録(投稿の際の全ての個人情報と sign-off を
329             含む)が無期限に保全されることと、当該プロジェクト又は関連する
330             オープンソースライセンスに沿った形で再配布されることに理解及び
331             同意する。
332
333 もしこれに同意できるなら、以下のような1行を追加してください。
334
335         Signed-off-by: Random J Developer <random@developer.example.org>
336
337 実名を使ってください。(残念ですが、偽名や匿名による寄与はできません。)
338
339 人によっては sign-off の近くに追加のタグを付加しています。それらは今のところ
340 無視されますが、あなたはそのタグを社内の手続きに利用したり、sign-off に特別
341 な情報を示したりすることができます。
342
343 13) いつ Acked-by: を使うのか
344
345 「 Signed-off-by: 」タグはその署名者がパッチの開発に関わっていたことやパッチ
346 の伝播パスにいたことを示しています。
347
348 ある人が直接パッチの準備や作成に関わっていないけれど、その人のパッチに対す
349 る承認を記録し、示したいとします。その場合、その人を示すのに Acked-by: が使
350 えます。Acked-by: はパッチのチェンジログにも追加されます。
351
352 パッチの影響を受けるコードのメンテナがパッチに関わっていなかったり、パッチ
353 の伝播パスにいなかった時にも、メンテナは Acked-by: をしばしば利用します。
354
355 Acked-by: は Signed-off-by: のように公式なタグではありません。それはメンテナが
356 少なくともパッチをレビューし、同意を示しているという記録です。そのような
357 ことからパッチの統合者がメンテナの「うん、良いと思うよ」という発言を
358 Acked-by: へ置き換えることがあります。
359
360 Acked-by: が必ずしもパッチ全体の承認を示しているわけではありません。例えば、
361 あるパッチが複数のサブシステムへ影響を与えており、その中の1つのサブシステム
362 のメンテナからの Acked-by: を持っているとします。その場合、Acked-by: は通常
363 そのメンテナのコードに影響を与える一部分だけに対する承認を示しています。
364 この点は、ご自分で判断してください。(その Acked-by: が)疑わしい場合は、
365 メーリングリストアーカイブの中の大元の議論を参照すべきです。
366
367 14) 標準的なパッチのフォーマット
368
369 標準的なパッチのサブジェクトは以下のとおりです。
370
371     Subject: [PATCH 001/123] subsystem: summary phrase
372
373 標準的なパッチの、電子メールのボディは以下の項目を含んでいます。
374
375   - パッチの作成者を明記する「 from 」行
376
377   - 空行
378
379   - 説明本体。これはこのパッチを説明するために無期限のチェンジログ
380     (変更履歴)にコピーされます。
381
382   - 上述した「 Signed-off-by: 」行。これも説明本体と同じくチェン
383     ジログ内にコピーされます。
384
385   - マーカー行は単純に「 --- 」です。
386
387   - 余計なコメントは、チェンジログには不適切です。
388
389   - 実際のパッチ(差分出力)
390
391 サブジェクト行のフォーマットは、アルファベット順で電子メールをとても
392 ソートしやすいものになっています。(ほとんどの電子メールクライアント
393 はソートをサポートしています)パッチのサブジェクトの連番は0詰めであ
394 るため、数字でのソートとアルファベットでのソートは同じ結果になります。
395
396 電子メールのサブジェクト内のサブシステム表記は、パッチが適用される
397 分野またはサブシステムを識別できるようにすべきです。
398
399 電子メールのサブジェクトの「概要の言い回し」はそのパッチの概要を正確
400 に表現しなければなりません。「概要の言い回し」をファイル名にしてはい
401 けません。一連のパッチ中でそれぞれのパッチは同じ「概要の言い回し」を
402 使ってはいけません(「一連のパッチ」とは順序付けられた関連のある複数の
403 パッチ群です)。
404
405 あなたの電子メールの「概要の言い回し」がそのパッチにとって世界で唯
406 一の識別子になるように心がけてください。「概要の言い回し」は git の
407 チェンジログの中へずっと伝播していきます。「概要の言い回し」は、開
408 発者が後でパッチを参照するために議論の中で利用するかもしれません。
409 人々はそのパッチに関連した議論を読むために「概要の言い回し」を使って
410 google で検索したがるでしょう。
411
412 サブジェクトの例を二つ
413
414     Subject: [patch 2/5] ext2: improve scalability of bitmap searching
415     Subject: [PATCHv2 001/207] x86: fix eflags tracking
416
417 「 from 」行は電子メールのボディの一番最初の行でなければなりません。
418 その形式は以下のとおりです。
419
420         From: Original Author <author@example.com>
421
422 「 from 」行はチェンジログの中で、そのパッチの作成者としてクレジットされ
423 ている人を特定するものです。「 from 」行がかけていると、電子メールのヘッ
424 ダーの「 From: 」が、チェンジログの中でパッチの作成者を決定するために使わ
425 れるでしょう。
426
427 説明本体は無期限のソースのチェンジログにコミットされます。なので、説明
428 本体はそのパッチに至った議論の詳細を忘れているある程度の技量を持っている人
429 がその詳細を思い出すことができるものでなければなりません。
430
431 「 --- 」マーカー行はパッチ処理ツールに対して、チェンジログメッセージの終端
432 部分を認識させるという重要な役目を果たします。
433
434 「 --- 」マーカー行の後の追加コメントの良い使用方法の1つに diffstat コマンド
435 があります。diffstat コマンドとは何のファイルが変更され、1ファイル当たり何行
436 追加され何行消されたかを示すものです。diffstat コマンドは特に大きなパッチに
437 おいて役立ちます。その時点でだけ又はメンテナにとってのみ関係のあるコメント
438 は無期限に保存されるチェンジログにとって適切ではありません。そのため、この
439 ようなコメントもマーカー行の後に書かれるべきです。ファイル名はカーネルソー
440 スツリーのトップディレクトリからの表記でリストされるため、横方向のスペース
441 をとり過ぎないように、diffstat コマンドにオプション「  -p 1 -w 70 」を指定し
442 てください(インデントを含めてちょうど80列に合うでしょう)。
443
444 適切なパッチのフォーマットの詳細についてはセクション3の参考文献を参照して
445 ください。
446
447 ------------------------------------
448 セクション2 - ヒントとTIPSと小技
449 ------------------------------------
450
451 このセクションは Linux カーネルに変更を適用することに関係のある一般的な
452 「お約束」の多くを載せています。物事には例外というものがあります。しか
453 し例外を適用するには、本当に妥当な理由が不可欠です。あなたは恐らくこの
454 セクションを Linus のコンピュータ・サイエンス101と呼ぶでしょう。
455
456 1) Documentation/CodingStyleを参照
457
458 言うまでもなく、あなたのコードがこのコーディングスタイルからあまりに
459 も逸脱していると、レビューやコメントなしに受け取ってもらえないかもし
460 れません。
461
462 唯一の特筆すべき例外は、コードをあるファイルから別のファイルに移動
463 するときです。この場合、コードを移動するパッチでは、移動されるコード
464 に関して移動以外の変更を一切加えるべきではありません。これにより、
465 コードの移動とあなたが行ったコードの修正を明確に区別できるようにな
466 ります。これは実際に何が変更されたかをレビューする際の大きな助けに
467 なるとともに、ツールにコードの履歴を追跡させることも容易になります。
468
469 投稿するより前にパッチのスタイルチェッカー( scripts/checkpatch.pl )で
470 あなたのパッチをチェックしてください。このスタイルチェッカーは最終結
471 論としてではなく、指標としてみるべきです。もし、あなたのコードが違反
472 はしているが修正するより良く見えるのであれば、おそらくそのままにする
473 のがベストです。
474
475 スタイルチェッカーによる3段階のレポート:
476  - エラー: 間違っている可能性が高い
477  - 警告:注意してレビューする必要がある
478  - チェック:考慮する必要がある
479
480 あなたはパッチに残っている全ての違反について、それがなぜ必要なのか正当な
481 理由を示せるようにしておく必要があります。
482
483 2) #ifdefは見苦しい
484
485 ifdef が散乱したコードは、読むのもメンテナンスするのも面倒です。コードの中
486 で ifdef を使わないでください。代わりに、ヘッダファイルの中に ifdef を入れて、
487 条件付きで、コードの中で使われる関数を「 static inline 」関数かマクロで定義し
488 てください。後はコンパイラが、何もしない箇所を最適化して取り去ってくれるで
489 しょう。
490
491 まずいコードの簡単な例
492
493         dev = alloc_etherdev (sizeof(struct funky_private));
494         if (!dev)
495                 return -ENODEV;
496         #ifdef CONFIG_NET_FUNKINESS
497         init_funky_net(dev);
498         #endif
499
500 クリーンアップしたコードの例
501
502 (in header)
503         #ifndef CONFIG_NET_FUNKINESS
504         static inline void init_funky_net (struct net_device *d) {}
505         #endif
506
507 (in the code itself)
508         dev = alloc_etherdev (sizeof(struct funky_private));
509         if (!dev)
510                 return -ENODEV;
511         init_funky_net(dev);
512
513 3) マクロより「 static inline 」を推奨
514
515 「 static inline 」関数はマクロよりもずっと推奨されています。それらは、
516 型安全性があり、長さにも制限が無く、フォーマットの制限もありません。
517 gcc においては、マクロと同じくらい軽いです。
518
519 マクロは「 static inline 」が明らかに不適切であると分かる場所(高速化パスの
520 いくつかの特定のケース)や「 static inline 」関数を使うことができないような
521 場所(マクロの引数の文字列連結のような)にだけ使われるべきです。
522
523 「 static inline 」は「 static __inline__ 」や「 extern inline 」や
524 「 extern __inline__ 」よりも適切です。
525
526 4) 設計に凝りすぎるな
527
528 それが有用になるかどうか分からないような不明瞭な将来を見越した設計
529 をしないでください。「できる限り簡単に、そして、それ以上簡単になら
530 ないような設計をしてください。」
531
532 ----------------------
533 セクション3 参考文献
534 ----------------------
535
536 Andrew Morton, "The perfect patch" (tpp).
537   <http://www.zip.com.au/~akpm/linux/patches/stuff/tpp.txt>
538
539 Jeff Garzik, "Linux kernel patch submission format".
540   <http://linux.yyz.us/patch-format.html>
541
542 Greg Kroah-Hartman, "How to piss off a kernel subsystem maintainer".
543   <http://www.kroah.com/log/2005/03/31/>
544   <http://www.kroah.com/log/2005/07/08/>
545   <http://www.kroah.com/log/2005/10/19/>
546   <http://www.kroah.com/log/2006/01/11/>
547
548 NO!!!! No more huge patch bombs to linux-kernel@vger.kernel.org people!
549   <http://marc.theaimsgroup.com/?l=linux-kernel&m=112112749912944&w=2>
550
551 Kernel Documentation/CodingStyle:
552   <http://users.sosdg.org/~qiyong/lxr/source/Documentation/CodingStyle>
553
554 Linus Torvalds's mail on the canonical patch format:
555   <http://lkml.org/lkml/2005/4/7/183>
556 --